依存症を誤解していませんか?好きなだけのやりすぎと依存状態の違い
身近にお酒を呑みすぎる人、ゲームをやり過ぎる人、ギャンブルばかりしている人がいて、「依存症なのではないか?」と不安になる方は多いのではないでしょうか。
依存症というと「やりすぎ」「度が過ぎた」「自制心がない」というようなイメージがあるかもしれませんが、
実際にどんな状態になったら依存症という病気なのかは知らないという方もいるのでは?
依存症の状態は病気であり、依存症に陥るまでの段階には様々な要因が関わっています。
「好きでやりすぎてしまった」から依存症なわけではないのです。
依存症という病気について、正しく理解しましょう。
目次
依存症とは?本人も苦痛を感じる病気
単に酒癖が悪い人を「アル中だ」と思っていて、「アル中」という言葉と依存症を混同している人は結構多いのではないでしょうか。
単に酒癖が悪くて本人が恥をかいたり周囲に迷惑をかけたりすることと、アルコール依存症とは違います。
では、依存症という病気であるということはどういうことなのでしょうか?
依存症とは
日常生活に支障をきたし、苦悩や苦痛などの良くない結果が生じているにも関わらず、アルコールや薬物、性的な行為、ギャンブル、窃盗などに対する渇望を自分でコントロールすることができない状態。
特徴として、本人が意図したよりも多くの使用量(行為)があり、以前よりもより多くの使用量(行為)が必要となってしまう。
使用(行為)のために多くの時間や労力が費やされ、仕事や家庭など生活に問題が生じる。嘘を繰り返し、お金を得るためや依存を隠すために数々の問題行動を起こすこともある。
依存にも段階があるので、白黒分けることは難しいですが、
一番重要なポイントは依存症という病気になったら自分ではコントロールができないという点です。
そのことによって本人も苦痛を感じており、ほとんどの場合で本人も「問題だ」と自覚しています。
きっかけとなった最初の摂取(行為)は自らの選択であるので、責任を求める気持ちもでてきてしまうかもしれませんが、
一度依存症になってしまったら自分ではコントロールできない病気であるという認識が大切です。
コントロールを失ってしまうことが依存症であるのにも関わらず、自制や我慢によってコントロールすることを求めていては解決にはなりません。
また、生活習慣病で悪くなってしまった身体がやめただけでは元に戻らないのと同じで、単に習慣を改めて治る病気ではありません。
「やめるという選択をしてくれない」のではなく、「選択だけではどうにもならない状態」なのです。
やめることに不安や苦痛を感じるようになる依存症の過程
ゲームやSNS、スポーツやトレーニング、お酒やタバコ、パチンコや競馬などなど、誰でも普通にやっていることが依存症として問題になってきています。
好きでやっているだけなのか、依存状態なのかがわからず不安になる方も多いのではないでしょうか。
沢山している、頻繁にしているということだけでは、依存症とは言えません。
眠れないから薬を飲む、気晴らしにお酒を呑む、ストレス解消にゲームをする、友達に付き合ってパチンコ屋に行く…。
これらの行動の度が過ぎてしまうと、お金がかかる、体調が悪くなる、生活や仕事に支障が出る、人間関係に悪影響を及ぼすなどのトラブルが出てきます。
この時点でトラブルが起きないような程度にまで留めることができない、トラブルに対処しない、トラブルに気が付かない場合に、依存症の危険性が高まります。
そして、最初は心身の苦痛や不安を和らげるために使っていたものが、「それがないとダメ」という依存に繋がってきます。
摂取や行動によるストレスが生じるようになるのも依存症への第一歩です。
眠れないから薬を飲んでいたのに、「薬を飲まないと眠れない」と不安になって薬を飲むようになる。
ストレスを解消するためにお酒を呑んでいたのに、お酒を呑んだことで生じたストレスをお酒で解消する。
楽しいからゲームやギャンブルをしていたのに、していないと「ソワソワする」「イライラする」からするようになる。
この時点では、まだ意志の力で無理やり、苦痛や不安を乗り越えてなんとかやめることができるかもしれません。
その後、楽しみや安らぎや快感の元になっていたものが、以前ほどには効果を感じられないようになっていきます。
このときに、以前と同じ量を続けていてもそれほど影響が見られず、一見生活が成り立っているように見える場合もありますが、
実際は脳に耐性がついてしまっていて危険な状態かもしれません。
耐性ができた結果、同じ量の摂取や行動では満足できなくなり、さらに多くの量を求めるようになってしまうのです。
それによって様々な支障が生じますが、それにも関わらず続けるようになっている場合は脳が依存状態に陥ってしまっている可能性が高いです。
「やめなければならない」のにやめられない理由
何故そんなに問題が出てくるまでやめなかったのか。という疑問が浮かんでくるかもしれません。
やめられなかった理由は、単純に「よくない」と感じてやめるかどうかの倫理観や意志の力だけではありません。
「やめなければならない」と感じているのにやめられないのが依存症。
依存症の状態になる過程でも、やめられないことには様々な要因が関わっています。
身体的に影響が出にくい
アルコールによって二日酔いになったり、ゲームやギャンブルなどの過剰な行動によって体力的に続かなくなる人、睡眠薬などの薬の影響が強く残ってしまう人は依存症にはなれません。
どこかのタイミングで身体を壊してしまうことがあれば、自然にやめることが出来たかもしれないのです。
仕事に影響が表れにくい
お酒を仕事中に呑める人はアルコール依存症になりやすいですし、仕事時間が自由で融通が利く人はどんな依存症にもなりやすくなります。
依存の元となる摂取や行動による悪影響を自分でカバーしてなんとか調整できてしまうような仕事をしている場合は、やめるきっかけができにくくなります。
周囲の人がトラブルをカバーしてしまう
依存の元となることにかかるお金を出してしまったり、本人が起こしたトラブルを解決してあげたり、世話を焼いて問題を解消してしまう人がいると、依存症を助長してしまいます。
「今回だけ助けるからやめなさい」などと言って助けてあげることで、むしろ本人のためにならないことがあるのです。
異変に気が付く人がいない
一人で生活していたり、深い付き合いの友人が居なかったりして、
本人の依存による異変に気が付く人がいないと、依存症になる前に踏みとどまるきっかけがなくなりがちです。
お金の使い過ぎや、日常生活の乱れ、精神的な悪影響は、よほどのことにならない限り他人が干渉するほどの事態にはなりません。
上手く隠せていることで、本人が問題の大きさに気が付かなかったり、自分を客観視することができないままに深刻な状態に陥ってしまいます。
他の楽しみや救いが得られない
やめなければならないと思っていても、生活や人生上に苦痛や生きづらさがあり、それがどうしても解消できないような状態が続いているとやめにくくなります。
「これでしか気が休まらない」というような状態になってしまっていると危険です。
必要な助けを差し伸べる人が居たり、代わりの健全な楽しみを見つけられたり、ストレス源が減るようなことがあればやめることができるかもしれません。
自己嫌悪に陥り、自己肯定感が低下する
依存の元となった行動や摂取によって、問題を起こしたり周囲の人から責められたりすると、
自己嫌悪に陥ってさらに苦しくなってさらに依存を促進してしまいます。
自己嫌悪によって自己肯定感が低下すると、
「自分はなんてダメな人間なんだ」「もうどうでもいい」「もう遅い」と感じてしまい、自分を大切にすることが出来なくなります。
元々自己肯定感が低い人も、依存から抜け出すために「自分のためにやめる」という選択をしづらくなります。
やめられなくなる前にやめる!依存症の境界線
最近度が過ぎているな……
問題を起こしてしまった……
このままでは良くない……
そう感じたときが、依存症にならないために大切なタイミング。
「問題に感じたけれども、何とかなって大丈夫だった」「問題に感じたストレスで更にのめり込んでしまった」そういったときが危険です。
「やめておこう」が出来ない
必要だと思ったとき、したいと思ったときにすぐに飛びつく癖がついていると危険です。
少しでも「しない方がいい」理由を見つけて、やめておこうと思えるようにすることが大切。
それほど必要ではないとき、しない方が良い理由があるときに、しないでいることができない場合は既に依存症の状態かもしれません。
今日も気分が悪いからスカッとしたいなぁ。よし。あれがあれば大丈夫!
気分が悪いけど、今日くらいはそのまま我慢して寝よう。
今日も気分が悪い。あれがないともっと悪くなる!どうしよう!早くしないと!
出来ない理由があっても抜け道を探してしまう
どんな依存症の元となる行動や摂取でも、いつでもどこでも常に続けられるわけではなく、必要な条件や時間があるはずです。
通常であれば可能な範囲で続けるはずですが、依存しそうになっているときはそれを広げようと抜け道を探してしまいます。
何度も抜け道を見つけて出来てしまった経験があると、どんどん歯止めが効かなくなって依存症になってしまうかもしれません。
車で来ているから呑めないけど、代行を頼めば大丈夫だろう
代行を頼むこともできるけど、車で来ているときは呑まない!
今日は時間がないけれど、あの用事を後に回せばパチンコ屋に行ける
用事を後回しにしてまでパチンコ屋には行かない!暇な時間があるときだけ!
明日は早起きしないといけないけど、頑張れば早起きできるからもう少し続けよう。
早起きしなきゃいけないから、寝る時間になったらやめる。寝不足で行くのはダメ!
摂取や行動の量を把握していない
依存症に陥るほどに習慣になってしまうと、気が付いたら増えているということがほとんどです。
本人が問題だと感じたときにはもう手遅れになっていることも。
何となく続けるのはやめて、以前より増えていないかどうかしっかり把握して、自覚するようにしましょう。
最後に休肝日をとったのはいつだろう?パチンコ屋に行かなかったのはいつだろう?
どれくらいお金を使っているか家計簿につけておこう。
問題が起きてもその場しのぎで済ませてしまう
依存の元となる行動は「必要なんだ」という考えや「これがないと辛い」という気持ちがあるため、例え問題を起こしてしまったとしても問題を軽視してしまいがち。
問題が起きてしまっても、行動や摂取を問題として考えるのではなく、それによって起きた問題がなければ解決したと捉えてしまいます。
しっかり責任をとって問題に対処して、二度と起きないように控えられるようにすることができない場合は危険です。
友達からの借金が重なって返せって怒られた。半分だけ返したらとりあえず許してくれたから良かった……。
友達関係にまで悪影響が出ちゃった。早く全額返して、もう借金するのは二度とやめよう。
仕事で失敗しちゃった。でもストレスばっかりで限界だったんだ。謝ったしもう忘れよう。
仕事で失敗して余計にストレスが溜まった。ストレス解消に使うのはやめよう。
依存そのものではなく全体を見ることが大切
この記事では依存症という病の状態について解説しましたが、依存症は病態について理解するだけでは理解できない病気です。
依存症は「依存症であること」が問題なのではなく、なんらかの問題を抱えている結果として出てくることが多いのです。
依存の元となった摂取や行動に注目するのではなく、その摂取や行動の元となっていることを理解して対処していく必要があります。
依存症という状態にならないように注意することも大切なことですが、
何かに依存してしまうような生活と本人の状態全体を見つめなおして見ましょう。
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