離人症とは?現実感の喪失や離人感はどうして辛い?

自分の人生を生きているという感覚がしない

現実のように感じられず、ぼんやりしている

自分を外側から眺めているかのように感じる


離人症という病名を知っていますか?

病名としてはあまり知られていませんが、ストレスを原因として誰でも発症することがある心の状態のことで、最も一般的な精神症状の一つです。

「自分自身として感じること」に異変が生じる離人症とはどんな状態なのでしょうか。

目次

  1. 離人症とは?最も一般的な精神症状の一つ
    1. 解離性障害とは
    2. 離人感と現実感消失
    3. 離人症はストレスが関連している!よくある精神症状
    4. 離人症になるきっかけや原因は様々
    5. 離人症はなぜ辛い?
      1. 人生や感情や感覚を失う喪失体験
      2. 感じ方が変わることの気味の悪さと混乱
      3. 人に話すこと、共感することができない孤独
      4. 目的や動機を失う空虚感
      5. 集中力や思考力や創造性などの低下
      6. 離人感や現実喪失感があっても苦痛はなくならない
      7. 離人症かもしれないと思う方へ

離人症とは?最も一般的な精神症状の一つ

離人症は解離性障害の一種です。

解離性障害とは

身体感覚、知覚、記憶、感情などの自分が自分として感じることやもっているもののすべては、通常ひとつにまとまっています。

それらの繋がりが失われたり薄くなったりすることによって現れる症状や状態を解離性障害と言います。

自分が分裂して複数の人格を持つことになる解離性同一性障害(多重人格)や、自分が経験したことが思い出せなくなる解離性健忘(記憶喪失)などが有名です。

解離性障害は他の病気の症状として現れることもありますが、基本的には強いストレスや現実から自分自身を守るための脳の防衛機制だと考えられています。

離人感と現実感消失

離人症では、解離性障害によって「これが自分が感じている現実である」と感じられなくなる現実感喪失や、「自分が自分だと思えない」ような状態になることが主な症状です。


自分の身体や精神から切り離されたような感覚や、自分の人生を外側から傍観しているような感覚を、離人感といいます。

しょんぼりうさぎ

何が起こっても自分はなにも感じられない……。そのことが辛くて空しい


また、自分と現実との間に距離が感じられたり、現実ではなく夢やフィクションの中であるかのように感じられることを、現実喪失感といいます。

現実感消失と表現されることもあり、離人症は現実感消失症とも呼ばれます。

しょんぼりうさぎ

確かに起こっていることなのに、なんだか本当のことじゃないみたい


このような現実喪失感や「自分の感覚」が変わってしまっている離人感が慢性的にある状態、または繰り返し現れるのが離人症です。

離人症では、現実を把握する能力は失われませんが、
本人の感じ方が変わることによって様々な精神的苦痛や日常生活への支障が生じます。

離人症はストレスが関連している!よくある精神症状

症状の出方には個人差がありますが、身近な人との死別後や、大災害の最中など、強いストレスを受けたときに一時的に経験する人は非常に多くいます。

ストレスうさぎ
よくある症状

しばらくは茫然として涙も出てこなかった


強い疲労感や薬物による影響、その他の精神疾患でも現れることがあります。

実際に視力や神経がおかしくなっている、記憶を喪失している、幻覚が見える、現実がおかしくなったということではなく、
「自分が感じることがおかしい」のだと自覚しているのが、その他の精神疾患とは分けられる離人症の特徴です。


国内での研究は進んでおらず、治療法も確立されていません。

誰でも経験することがある身近な症状のわりには認知度が低く、「自分だけがおかしい症状で苦しんでいる」と思い込んでしまうことも多いです。

離人症になるきっかけや原因は様々

一般的には、離人症は強いストレスが原因であると言われ、特に虐待やドメスティックバイオレンス、損失体験、特に幼少期の経験が原因になると説明されることが多いです。

ですが、「自分にそこまでのストレスがない」からと、離人症ではないと決めつけてはいけません。

離人症の症状は、危険であったり自分にとって耐えられなかったりする現実から自分自身を守るためのバリアとして始まることが多いです。


ストレスに対する反応は人によって違うため、自分では大したことがないと感じているストレスでも離人症という形で現れることがあります。

はてなうさぎ

いつからこんな風になっちゃったんだろう?思い出せない


自覚のないストレスもありますし、受け入れがたい現実が原因であることもあります。

また、統合失調症やうつ病などの精神疾患、薬の作用などでも現れることがあるため、慎重な判断が必要です。

離人症はなぜ辛い?

離人症の症状の出方は人によって、そのときによって様々ですが、ほとんどの症状が、離人症になるまでは感じたことのない感覚です。

本人が感じていることは客観的に考えることが難しく、人によっても違うためにその困難はなかなか理解されません。

人によって違いはありますが、よくある辛さの原因を解説します。

人生や感情や感覚を失う喪失体験

自分の人生を生きている感覚がなくなるというのは、今までの人生がなくなってしまったような感覚も生みます。

しょんぼりうさぎ

自分の記憶なのに、自分の生活なのに、もう自分のものじゃないみたい

その他の症状でも、自分自身だとは感じられなくなったり、周囲の世界からの距離を感じるなど、今まで自分が生きていた感覚の喪失があります。

しょんぼりうさぎ

突然外の世界から隔離されてしまったみたいに感じる

今まで大切にしていたことや、好きだったこと、嬉しかったことや楽しかったことをすべて感じられなくなる人もいます。

しょんぼりうさぎ

楽しいはずなのに、嬉しいはずなのに、何も感じない……なんで?

ご飯の美味しさや、睡眠の心地よさなどの基本的な感覚まで失ってしまう人もいます。

しょんぼりうさぎ

ロボットになっちゃったみたい

離人症は自分自身のなかで感じる強烈な喪失体験なのです。

感じ方が変わることの気味の悪さと混乱

離人症の症状はほんとうにおかしなもので、さらに感じ方すべてを変えてしまうことなので、本人にとってのショックは大きいです。

ストレスうさぎ

周囲の見え方も自分の身体の感覚もおかしい。これって本当に現実なのかな?
頭がおかしくなった!?

離人症では現実を正しく認識する能力は保たれるのですが、だからこそ感覚のおかしさが本人にとって気持ちが悪いのです。

ストレスうさぎ

自分自身を後ろから眺めているみたい……見えるわけないのに!

しょんぼりうさぎ

これは確かに現実なのに、まるで夢の中みたいにしか感じられない

人に話すこと、共感することができない孤独

離人症の人は、自分が感じている症状が正常な状態ではないことを自覚しているため、他人と共感することができなくなったと感じることが多いです。

しょんぼりうさぎ

自分だけ違う世界を生きているみたいな感じがする

また、離人症に関する情報が少ないことと、経験したことが無い人には症状を理解しづらいことから、離人症について人に話すことができないでいる場合も多いです。

しょんぼりうさぎ

こんな変な感覚になってしまうのは自分だけ……?

離人症の症状による孤独感と、離人症であることの孤独感の両方を抱えることになってしまいます。

目的や動機を失う空虚感

自分自身が持っていた情熱や意志を失ってしまうと、何に対してもやる気が湧いてこなくなります。

楽しさや充実感も感じられなくなってしまう場合が多いので、何をする気にもならなくなってしまう人もいます。

しょんぼりうさぎ

この感覚が治らない限り、なにをしたって意味ない……

その他にも、自分が外の世界に影響を与えられると感じられなくなったり、すべてがフィクションや他人事のように感じられて意味を感じられなくなる人もいます。

一見普段どおりに活動していて、誰から見てもわからない場合もありますが、本人は空虚感を抱えています。

しょんぼりうさぎ

楽しいことや嬉しいことがあるみたいだし、なんだか色々しているけれど、自分ではそう感じられない

集中力や思考力や創造性などの低下

離人症の症状によって、すべてが平たんに重要性がなく感じられて物事に集中できなくなったり、うっかりミスが増えたりすることもあります。

自分自身の感覚を失うことで、元々は持っていた創造性が発揮できなくなったり、思考がまとまらなくなってしまうことも。

脳や神経の病気を疑ったり、自分自身がダメな人間になってしまったと思ってしまったりする人もいます。

しょんぼりうさぎ

今自分が何をするべきなのかよくわからなくなっちゃった

離人感や現実喪失感があっても苦痛はなくならない

本人ですら疑問に思うことが多いのですが、感情が薄れたり現実感が薄れたりしても、そのことが辛いという感覚はなくなりません。

本当に自分自身の意識が消えたわけではないので、「現実感を感じられない」「他人事みたいだ」「感情が薄くなった」と感じている自分がいるのです。

元々の自分の感覚が変わってしまったことは認識しているため、症状の出方によっては本人の苦痛は本当に大きなものです。

しょんぼりうさぎ

楽しさや嬉しさが消えちゃったのに。辛い気持ちしか感じられない人間になっちゃったのかな?

本人が感じることに異常が生じる病気だからこそ、本人の苦痛にしっかり目を向ける必要があります。

離人症かもしれないと思う方へ

離人症は本人のみが感じることであることと、認知されていないということ、他人と共感する感覚自体が失われてしまう症状などによって、孤独になりやすいです。

人に話して共感を得ることは難しいかもしれませんが、
誰にでもある症状で、特別おかしくなってしまっているわけではないことを、知っておいてください。

離人症で問題なのは、落ち込みによるうつ状態や「治らないのでは?おかしくなってしまったのでは?」という強い不安によって本人が苦しむこと。

感覚がおかしいということを悲観し過ぎず、ストレス症状が出ているだけなのでいずれ元に戻ると考えるようにしましょう。

離人症を直そう!と焦るよりも、ストレスや不安を無くして心をケアすることを意識してくださいね。

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