対人関係の問題は脳が違うことで起こる!?脳多様性(Neurodiversity)と自閉症

脳多様性(Neurodicersity)という言葉を知っていますか?

自閉症スペクトラム、学習障害、 注意欠陥・多動性障害 、発達障害などの障害を、単なる脳の違いと捉える考え方です。

そもそも人間には一人一人様々な違いがあるので、特定の能力が平均よりも劣っていたり、違った特徴を持つからといって無理に直そうとするのは不自然。

生き物として当然の多様性として捉えるべきなのではないでしょうか。


少数民族やLGBTQ(性自認・性的指向の少数者)が権利を侵害されることがあるように、
残念ながら単に少数派であることで社会で生きづらさが生じることがあります。

「普通ではないから治すべきものだ」と捉えるのではなく、社会のなかで誰もが自分らしく生きていけるようにする考え方が広まってきています。


この記事では、自閉症スペクトラムの特徴を例に「少数派」であることによるコミュニケーションの問題を脳多様性(Neurodivercity)の観点から解説します。

注意や意識の向け方が違うとコミュニケーションが上手くいかない

空気が読めない、人の気持ちがわからない、ましてや共感できないなどと思われることもある自閉症スペクトラムの「対人関係が苦手」な傾向。

コミュニケーション能力が劣っているというように理解されてしまいがちですが、
実は意識の向け方が違うだけなのではないかと言われています。

そもそも、どこに注意を向けるかには個人によって違いがある

建物が崩れる事故が起こり、大けがをしている人が居ます。親とはぐれて泣いている子どももいます。犬ががれきの近くで吠えています。自分の友人が「どうしよう?」と泣きながら自分を見ています。

このような状況で、必ずしも目の前にいる友人の顔を見て、答えることを優先するでしょうか?

例えばあなたが医者なら、大けがをしている人のもとに駆け付けるかもしれません。

子どもが優先だと考えて助けにいくかもしれないし、犬のことが気になるかもしれません。

建物がこれ以上崩れてこないかどうか、建物の様子を見る人もいるでしょう。

このように、同じ状況でもどこに注意を向けるかは人によって違います。

単なる違いがコミュニケーションの障害になる仕組み

人によって違いがあるといっても、日常の場面では多くの人がとる行動多くの人が注意を向けることというのがわかりやすいことが多いです。

静まり返った室内で、大きな声をあげる人がいたら多くの人がそちらを見ますし、
騒がしい場所でも自分の方を見て「おはよう」と言う人にはすぐ気が付きます。

自閉症スペクトラムの特徴である「対人関係が苦手」ということの原因として、この「多くの人」とは意識の向け方が違うらしいのです。


自分の方を見て「おはよう」と言っている人よりも、その先にいた道端の野良猫の方が気になってそちらに注意を向ける人もいます。

違ったところに注目しているだけならば単なる「変わった人」ですが、

周囲と協調的な行動をとれない

「無視された!」などと誤解されて怒られてしまう

などの困った状況が起こることで、対人関係の「障害」となるのです。

相手の反応を予想できないとコミュニケーションは難しい

「相手が大体このような行動をとるだろう」ということが予想できないと、コミュニケーションは難しくなります。

挨拶を返さないことで相手が「無視された!」と怒るのは、通常ならば挨拶をしたら気づいて挨拶を返すということを前提とした怒りです。

そうして怒っている人に「気が付かなかった」と言ったら、びっくりするかもしれませんし、嘘だと思われてしまうかもしれません。

多数派である人にとっては、少数派である自閉症スペクトラムの人の行動が予想できないことによってコミュニケーションが上手くいかないのです。


自閉症スペクトラムの傾向がある人では、あたりまえの日常の場面で小さな意識の違いからすれ違いが生じます。

Aさんは大切なものが壊れているのを発見しました。そばに立っていたBさんに「あなたが壊したの?」と聞きましたが、Bさんはその質問に答えずに「こうすれば直るかも…」などと直すための方法を言い出したので、AさんはBさんが壊したのだと思って怒りました。

実は、Bさんが壊したわけではなく、
Bさんは「自分が壊したのかどうかAさんにきかれた」ことよりも「壊れてしまったものを直したい」ということに意識が向いていただけなのです。

Aさんは誰が壊したのかということに意識が向いており、Bさんはどうやって直すのかということに意識が向いていたというちょっとした違いです。

当たり前、礼儀という慣例によって単なる違いがさらに問題になる

どうやって直すのかが気になっていたとしても、社会的には自分に話しかける人がいたら答えるのが礼儀でしょう。

とはいえそれは、
Aさんのように人間関係を重視する人が多数派な社会で自然と生まれた礼儀であって、
Bさんのような人にとっては理解しづらい「謎の習慣」なのです。

このようなすれ違いが生まれることから、自閉症の人は違う星で生きているようなものだとも言われます。


「自閉症の人がコミュニケーションが苦手」というよりは、

多数派(普通とされる)の感覚を持つ人と、少し違う感覚を持っている少数派の人との間でうまくコミュニケーションが取れないのだ

という捉え方をすれば、理解しあえるかもしれません。

普通の人はどうするかを知っているために気付かれない自閉症スペクトラム

自閉症の支援では自閉症を治すことを目指すのではなく、
多数派が作った「謎の習慣」を理解して社会のなかで問題なく生活できるように支援していきます。

自閉症スペクトラムの人のなかには、
「普通の人はどうするか」を知っているので相手に合わせることができ、問題のない対応ができる人もいます。

支援がなくても、自閉症の傾向があることに気づかれずに大人になり、
周囲の人もその人がちょっと違う感覚を持っているということに気付かない場合があるのです。


合わせられるようにすればよいとはいえ、
実際には違っているだけなのに普通の人に合わせることが必要な世の中のままで良いのでしょうか?

多数派とうまくやっていくことは社会のなかで問題を起こさないために必要なことかもしれませんが、
「自分らしく生きるべきだ」という考え方も広まってきています。

自閉症が問題というよりは、
それによって生活の動作ができなかったり、社会のなかで上手くやっていくことができずにうつ状態になったり、孤立したりして、
本人に苦痛が生じてしまうことを防ぐために、支援が必要な場合があるというように捉えましょう。

身近な人とのすれ違いの理由は自閉症スペクトラムかも?と思ったら

頻繁に起こる理由がよくわからないすれ違いは、相手の感覚が自分とは違っていることが原因かもしれません。

相手からの悪意は感じないのにないがしろにされているような気がする

こちらの事情に気付いてもらえなかったりすることがほとんど常に変わらずある

というような場合は、注意や意識の向け方の違いについて考えてみると良いです。


自分が当たり前と思っていることが、相手にとっては当たり前ではないという可能性をまず考えてみる必要があります。

相手の立場にたって考えてみることをしながら、自分の立場を明確に論理的に伝えるのがわかり合えるコツ。

先ほどのAさんとBさんの例ならば、「大切なものなのでどうして壊れたのか知りたい」とハッキリ伝えたうえで、Bさんから答えをきちんと聞いてから怒るべきですよね。


もし身近な人がどうやら自閉症スペクトラムであるということに気付いても、「自閉症の人はこう考えている・こんな人である」などと一概には言えません。

本やネットの記事などで傾向を知ることは大切ですが、それぞれ違っているのが脳多様性(Neurodiversity)。

何事も決めつけないようにすることが根本的な考え方の要です。

ついついやってしまいがちな「当然わかるでしょう」をやめてしっかりとコミュニケーションをとることで誤解がなくなるかもしれません。

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